犬も歩けば猫も歩く

中年サラリーマンの生活と副業について書いています。

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自転車のペダルを漕ぐ君の後ろ姿

その日も朝から風が強く、とても寒い朝だった・・・。
暖房のスイッチを強めにしたところで、すぐには車内は暖まらず、震えながらハンドルを握っていた。


そして、駅近くのT字路に差し掛かった時、その後ろ姿が見えた。

自転車通勤

君だ!


ここから駅近くまで続く長い坂道を、必死になって自転車のペダルを漕ぐ君の後ろ姿。その光景を、月に何度か車内から見かけるが、彼はペダルを漕ぐのに夢中でこちらの存在には気付いていない。


自分は、そのまま会社まで自動車通勤だが、彼は一旦最寄り駅で自転車を降り、そして電車に乗り換える。


やがて電車は、会社の最寄り駅に停車。
電車を降りた彼は、そのまま会社に向かうわけではない。駅近くにある駐輪場に向かい、また自転車にまたがって、会社に向かって走り出す。


たぶん、自転車でも15~16分くらいは掛かるだろう。
そうやって、彼は毎日会社に通勤している。


自分も一度、交通費を節約しようと休日のとある日、駅まで自転車で出かけたことがあるが、一回で参ってしまった・・・。言い訳ではないが、彼よりも駅から自宅が離れているので、20分以上も掛かる。


さらに、駅近くの第一、そして第二駐輪場は一杯で、仮説で増設された第三駐輪場は、駅まで徒歩で5分以上掛かるだろう。


彼とは、何年か前同じ会社で働いていたことがある。
会社の業績がおかしくなり始めた時、彼は真っ先に会社を飛び出した!


けど・・・、そこはブラックだったらしい。正社員のハズが入社してみたら、契約社員。我慢して働いていたらしいが、その会社も業績がおかしくなりリストラされてしまったらしい。


そして、縁あって今の会社に入社したのだが、きっと足下を見られたのだろう。
前職で契約社員だったため、またもや契約社員での採用となったようだ。
契約社員とはいっても、やることは正社員とまったく同じだが、給料がずいぶん安いらしい。 


そして、もちろんボーナスなど出ない。


数年前、自分が入社する時に、

「○○君も契約社員なんだろう?」

と聞かれたが、正社員だとは言えなかった・・・。


そして昨日の夕方、奥さんに付き合って近所の大型スーパーに年末年始の買い出しに出かけた。そこの駐車場で、たくさんのショッピングカートを押す警備員の姿を見た時、ハッとした!


君だ!


彼は休日になると、どこかでアルバイトをしているらしいと聞いたことはあるが、こんなところで見かけるとは・・・。


自分は、とっさに自動車の陰に身を隠した。
彼の身になって考えると、きっと見られたくないに違いない。
そしてまた、自分も掛ける言葉が見つからなかった・・・。


彼はまじめだし、人柄もとてもいいんだ。
もちろん、仕事だって手を抜かないし、一生懸命やっている。


彼が、せめて正社員になれて、収入が増えることを願うばかりだ。