細くて暗く、長い通路の向こう側
■エピローグ
わたしには、娘がいる。
今日は、この娘の話を書こうと思う。この一件は、いままで記事にすべきかどうか随分と悩んだのだが、いまでもこの病気で苦しんでいる人、またこの病気が現代社会で増えつつあるという現実を踏まえて、少しでもそんな方の助けになれば良いと思い、記事にしたためることにした。
我が家は、どこにでもあるいわゆる普通の家庭だった。
ただ、当時自分の勤めていた会社の業績が悪化、すぐにボーナスの支給が止まった。自分では、明るく振る舞っていたつもりでも、今思えば家で鬱ぎ込むことが多くなったような気がする。
その年の秋頃からだろうか?
子ども部屋から、娘の歯ぎしりの音が毎日のように聞こえてくるようになった。当時は、そんな歯ぎしりのことなど、笑い話になるくらい、親子ともども深刻な問題とはまったく感じていなかった。
そして冬を迎えた辺りから、娘の様子が変わってきた。
短期間の間に、娘の体重が激減してきた。見ていて異常とも思えるくらいだ。そんな娘を見て、奥さんは体重計に載るよう促したが、一向に「何でもないから大丈夫!」の一点張り。
わたしは、自分を責めた。
自分の勤めている会社の業績が悪くなったのを、なにかで知ってそれを気に掛けているのではないか?もし、そうだとしたら、全部自分のせいだ・・・。
奥さんに聞いてみると、そのことはあなたとわたし以外誰も知らない。だから、それが理由とは考えられないから心配しないで。
しかし、明らかに異常な痩せ方だ。
奥さんは会社を休んで、行き渋る娘を連れて婦人科を訪れた。結果は異常なし。その後も、都内の総合病院などを訪れたが、明確な答えが出なかったが、とある病院で精神科に行かれて見てください!とのアドバイスを頂いた。
しかし、精神科とはいっても、ほとんどが大人が対象の病院ばかりで、児童を対象とした精神科は、日本全国でもほんの数カ所しかない。
口コミなどでいろいろ調べると、県内に1ヵ所だけ児童精神科がある総合病院があることが分かった。しかし、受診を申し込むと1ヶ月以上待ちだという・・・。
■学校に直談判
しかし、もうそのころになると、娘は学校に行き渋るようになり、やがて不登校になってしまった。自分は、矢も立ってもいられず、学校を訪れ「校長に合わせてくれ!」と言った。
応接室で、待つこと十数分。
校長と教頭、学年主任、そして担当教師の4名が現れた。
自分は、今までの経緯を一気に説明し、こう問いかけた。
「担当の先生に伺いますが、受け持ちの子がここまで激やせして気がつかなかったのですが?気がついていたのなら、それなりの対応があってしかりではないのですか?第一、我が家に対して何の連絡もありませんでしたよね。」
担当曰く、
「まったく気がつきませんでした。○○ちゃんは、バスケットボールクラブに入っていって、活発な子だと認識しておりました。
「ちょっと、待ってください。あなた今なんて言った?○○ちゃんって言いましたよね。うちのこの子の名前は、○△です!」
「す、すみません。気が動転して勘違いしておりました。」
このクラスには、同じ名字の子が二人いる。こんな大事な時に、名前を間違えるなんて、この担任は絶対に使えないと判断した自分は、そこからは校長に向けて話をした。
「家庭内で暴力とか、虐待とか、貧困とか、家庭内別居とか、問題があるとは思えません。つまり、問題があるとすれば学校だ。二日待ちます。学校内でいじめがあったかどうか、至急調査をしてください。二日です。二日待っても、連絡がなければ、教育委員会に出向きます。」
「どうぞ、よろしくお願い申し上げます。」
と言って、学校を後にした。